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イノベーションが経済成長の原動力となるとの認識から、国際的イノベーション競争が激しくなってきている。伝統的には、イノベーションの担い手が企業、とりわけ既存大企業であるとの暗黙的前提が存在していたが、米国がバイオテクノロジーやICT(情報通信技術)にいけるリーダーシップを発揮した背景が、大学発技術の実用化および新設企業群によるイノベーションであったことの認識が深まり、イノベーションの源泉を大学の研究成果に求めることにつながってきた。その実現手段のひとつとして大学発ベンチャー(ハイテクスタートアップス)も脚光を浴びることになった。
産業技術総合研究所(AIST)は、科学技術振興調整費戦略的研究拠点事業として、「ベンチャー開発戦略研究センター」を設置し、ハイテク・スタートアップス創出と日本に適合するインキュベーション戦略の研究を行ってきた。前者に関しては、実際に起業した案件のビジネスプラン中心に成果報告会で紹介し、後者に関しては海外インキュベーション事情ほかワークショップで報告した(この報告は2007年2月「ハイテク・スタートアップス創出戦略」としてまとめた)。
海外事情調査の中で、中国は特異な位置づけとなっている。1980年代後半、大学および中国科学院からのベンチャー創業が活発となり、IBMのパソコン部門買収で脚光を浴びた中国科学院発の聯想集団(Lenovoグループ)、清華大学発の清華紫光、清華同方など中国の先端産業を代表する企業集団に成長してきた成功経験を持つ。ただし、これら企業は国際的技術フロンティアでのイノベーションによる成長というより、先端分野でのキャッチアップ達成の要素が強く、現在欧米や日本で議論されている大学発ハイテク・スタートアップスのイメージからは外れる。
我々は、仮説を立てた。「21世紀に入り、中国では技術フロンティアでのイノベーションを達成し、バイオテクノロジー、LSI設計分野で成長しつつある大学発ハイテクスタートアップスが存在する。」という仮説である。中国のイノベーション政策、インキュベーション事情などの調査と共に、この仮説に合致する企業の探索を含め、シンクタンクである技術経営創研の協力を得てサーベイを行ってきた。結果として、仮説に合致する企業が存在し、成功を収めつつあることが確認できた。その事例企業の概要、大学との関係、経営陣の体制などをやや詳しく伝えることが、日本での戦略研究にも資すると考え、中国に関しては別冊の形で報告書にまとめることとしたものである。
充分な調査とは言いがたいが、今後研究の一助となれば幸いである。
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本稿は渡辺氏が書かれた『中国におけるハイテク・スタートアップス調査研究報告書』(発行元 産業技術総合研究所 2007年)の「はじめに」の転載である。
なお、同調査研究報告書は中国におけるハイテク・スタートアップスの全体像を俯瞰的に提供するほか、上海復旦微電子、北京神州龍芯、北京博奥生物芯片、中山大学達安基因といったハイテク・スタートアップスの実際、及び北京、上海、深センのインキュベータも紹介した。 |
東京工業大学大学院 社会理工学研究科
産業技術総合研究所 ベンチャー戦略開発センター |
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