| 第二弾 040202  特許権持分確認等請求事件 : 中村教授 vs 日亜化学 From 東京地裁


当裁判所の判断 2/2




本件トップ <<


5 独占の利益の算定   

    (1) 独占の利益算定の基準時
    (2) 被告会社におけるGaN系LED及びGaN系LDの売上高
    (3) 被告会社の独占の利益
    (4) 被告の主張について



    
(1) 独占の利益算定の基準時     

上記2ないし4における検討の結果によれば,本件特許発明は,高輝度青色LED及びLDの製造のためのGaN系半導体結晶膜を成長させるに当たって決定的な役割を果たす技術であり,高輝度青色LED及びLDの市場において被告会社が優位な立場を獲得しているのは,本件特許発明を実施して半導体結晶膜を製造し,本件特許権により,競業他社に対して本件特許発明の実施を禁止していることに起因するものと認められる。     

そこで,被告会社が高輝度青色LED及びLDの市場における優位な立場を通じて得ている超過売上高を認定し,それにより被告会社が本件特許発明を実施する権利を独占することによって得ている利益(独占の利益)を算定する。     

ところで,前記1(1)において判示したとおり,上記の独占の利益は,特許権の存続期間満了までの間に使用者があげる超過売上高に基づく利益を指すが,勤務規則等に職務発明の対価の支払時期が定められている場合には,特段の事情のない限り,独占の利益は,中間利息を控除して当該支払時期の時点における金額として算定するのが相当である。     

本件においては,前記の前提となる事実(第二,三6)記載のとおり,本件特許発明の特許出願当時,被告会社においては被告社規が施行されていたところ,同社規の10条には,「従業員が行った発明・考案及び改善提案に対し,別に定める基準(付則−1)により表彰及び褒賞金を支給する。」と定められていた。また,これを受けた社規第17号付則−1の「U 発明・考案関係」と題する項には,次のとおりの規定が置かれていた。        

1.審査及び表彰基準          

発明・考案の評価は,下記事項に基づき特許委員会が審査を行い,上長の承認を受け表彰する。賞金はその都度決定する。         
@特許出願件数         
A権利取得状況         
B内容の検討        

2.褒賞金支給基準         

@特許出願1件につき   10,000円         
A権利成立1件につき   10,000円         
B認証1件につき      5,000円   
C実用新案出願1件につき  5,000円   
D実用新案成立1件につき  5,000円     

上記によれば,被告会社の社規においては,従業員が職務発明をした場合には,特許については,特許出願1件につき1万円,特許登録1件につき1万円を基準として,特許委員会が,特許出願状況,権利取得状況,権利の内容を検討の上,その都度,褒賞金の金額を決定して支給するものと定められている。もっとも,証拠(原告本人,乙32,33)及び弁論の全趣旨によれば,上記社規の実際の運用としては,被告会社の組織として特許委員会は置かれておらず,特許出願時及び特許登録時に従業員発明者に各1万円が支払われていたもので,原告も,被告会社から,本件特許発明を特許出願した平成2年10月25日ころに1万円,本件特許権が設定登録された平成9年4月18日ころに1万円の各支払を受けたものである(原告に対する前記各支払は,当事者間に争いがない。)。     

被告社規の規定する上記褒賞金は職務発明の対価の一部をなすものというべきであるから,被告社規とこれを受けた社規第17号付則−1の上記各規定は,勤務規則等に該当する被告社規において定められた,相当対価の支払時期に関する定めに該当するというべきである。そして,そこで定められた最終の支払時期は,いわゆる登録補償金(上記の社規第17号付則−1のU2.A)の支払の要否が明らかになる特許権の設定登録時ころと認められる。     

上記によれば,本件においては,独占の利益は,中間利息を控除して相当対価の最終支払時期である本件特許権の設定登録時(平成9年4月18日)における金額として算定するのが相当である。   
     
(2) 被告会社におけるGaN系LED及びGaN系LDの売上高

そこで,被告会社の独占の利益を算定する前提として,被告会社におけるGaN系LED及びGaN系LDの売上高を認定する。    

ア GaN系LEDの売上高の算出      

証拠(甲5,122,乙85の2,117)を総合すると,一般に入手可能な資料に基づき既に明らかになった,青色LEDが市場に出始めた平成6年から平成14年までの被告会社のGaN系LEDの売上(各年度12月末日締め。以下,売上高,予想売上高等については,すべて同様である。)は,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」1記載のとおり,合計2398億5100万円である。      

次に,平成15年以降の売上については,@GaN系LEDの市場全体の成長率,A被告会社の市場占有率,及び,B被告会社の成長率を,下記のとおり推測する(甲122)。                      
              上記@    同A    同B        
平成15年(2003年) 45.4%  52.2%  34%        
同 16年(2004年) 30.6%  49.8%  25%        
同 17年(2005年) 17.1%  47.4%  11%        
同 18年(2006年) 14.3%  44.9%   8%        
同 19年(2007年) 18.6%  42.5%  12%        
同 20年(2008年) 16.7%  40.1%  10%        
同 21年(2009年) 16.7%  37.7%  10%        
同 22年(2010年) 16.7%  35.2%   9%      

上記各数値は,平成7年から平成14年までの上記@ないしBの数値(既に明らかとなっており,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」2記載のとおりである。)を基礎として推測したものである。すなわち,まず,上記@については,LED業界で高い信用を得ている米国Strategies Unlimited社作成に係るレポート「Gallium Nitride−2003」(甲120)に基づき,平成15年以降のGaN系LEDの市場規模を予測して算定したものである。そして,上記Aについては,被告会社の生産能力が市場の伸びに追いつかない懸念,代替技術登場の可能性及び販売体制の制約等の事情を加味し,平成14年における被告会社の市場占有率が,本件特許権の存続期間満了年次である平成22年までの間に,GaN系LEDが製品化されてからこれまでに被告会社が記録した最も低い市場占有率にまで逓減するというように被告会社の将来の市場占有率を控えめに予測したものである(甲122〔10頁,11頁〕参照)。上記各予測数値は,本件において提出されている証拠上,最も控えめな予測数値であり,合理的なものと認められる。      

そこで,上記各予測数値に基づいて算定したGaN系LEDの市場規模(市場全体の売上高)に被告会社の各年度の上記予想市場占有率を乗じて,各年度ごとの被告会社の予想売上高を算出する。その結果は,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」3記載のとおり(1万円未満切り捨て。以下同じ)である(ただし,平成22年度分については,本件特許権存続期間満了日である平成22年10月25日までのもの〔日割計算〕である。甲122〔11頁,23頁〕参照)。 そして,前記(1)において判示したとおり,本件においては,独占の利益は,中間利息を控除して相当対価の最終支払時期である本件特許権の設定登録(平成9年4月18日)の時点における金額として算定するのが相当であるから,独占の利益算定の前提となる被告会社の売上高についても,中間利息を控除して同時点における金額として算定しておくのが便宜である。      

そうすると,本件特許権の設定登録時までに既に得られていた平成6年から同8年までの売上高については,これらを合計すると(これらの売上高中の独占の利益に対応する相当対価は,いずれも本件特許権の設定登録時に支払時期が到来し,それまで遅滞とならないから,遅延利息は付さない。),60億4600万円となる。      

他方,平成9年から特許権存続期間満了年次である平成22年までに得られることが予測される各年度ごとの売上については,これをまず複利計算により中間利息(年5分)を控除して平成9年(12月末日)現在の価値にひきなおした金額を合計した上(なお,被告会社の売上高等,算定の基礎となる各数値が各年度を単位として算出されていることから,上記中間利息の控除についても,年度ごとを単位としてこれを行うこととする。),更に平成9年12月末日から上記基準時(平成9年4月18日)までの間の中間利息(年5分)を控除して,算定すべきこととなる。      

平成9年以降の分についてまず平成9年12月末日現在の価値として上記の計算を施した上での,被告会社のGaN系LED売上高に関する各年度ごとの数値は,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」4記載のとおりであり,これらの合計額は1兆1380億9394万円となる。      次に,平成9年から平成22年までの売上げ合計1兆1380億9394万円について,これを更に本件特許権の設定登録時である平成9年4月18日現在の価額として算定すると,上記1兆1380億9394万円から257日分(平成9年4月19日から同年12月31日まで)の中間利息(年5分)を控除した1兆0993億8940万円となる。     

1兆1380億9394万(円)÷{1+(0.05×257/365)} = 1兆0993億8940万(円) そして,平成6年から同8年までの売上高合計60億4600万円に上記1兆0993億8940万円を加算した合計1兆1054億3540万円が,GaN系LEDについて平成9年4月18日を基準とした相当対価を算出するための基礎となる売上高合計額となる。    

イ GaN系LDの売上高の算出      

GaN系LDについても,前記米国Strategies Unlimited社作成に係るレポート「Gallium Nitride−2003」(甲120)に基づいて,平成15年以降のGaN系LDの市場規模を予測する。また,被告会社は,既にLD市場においても主導的な地位にあると認められるから,被告会社が,少なくともLED市場において過去に記録した被告会社の最低市場占有率と同率の市場占有率を,LD市場においても占めるものと控え目に予測した(甲122〔10頁,12頁〕参照)。そして,上記LD市場の予測規模に上記市場占有率を乗じて,各年度ごとの被告会社の予想売上高を算出すると,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」5記載のとおりである(ただし,平成22年度分については,本件特許権存続期間満了日である平成22年10月25日までのもの〔日割計算〕である。甲122〔12頁,26頁〕参照)。      

上記の各売上高を,LEDの場合と同様に,まず複利計算により中間利息(年5分)を控除して平成9年(12月末日)現在の価値にひきなおした金額を求めると,別紙「相当対価算定についての当裁判所の判断」6記載のとおりであり,合計1067億9788万円となる(ただし,1万円未満は切り捨て)。      

そして,平成15年から平成22年までの売上げ合計1067億9788万円について,これを更に本件特許権の設定登録時である平成9年4月18日現在の価額として算定すると,上記1067億9788万円から257日分(平成9年4月19日から同年12月31日まで)の中間利息(年5分)を控除した1031億6587万円となる。     

1067億9788万(円)÷{1+(0.05×257/365)} = 1031億6587万(円)    

ウ 小括      

以上によれば,本件において,平成9年4月18日を基準とした相当対価を算出するための基礎となる売上高合計額は,GaN系LEDについての上記1兆1054億3540万円とGaN系LDについての上記1031億6587万円との合計額である1兆2086億0127万円と認められる。         

1兆1054億3540万(円)+1031億6587万(円) = 1兆2086億0127万(円)   
     
(3) 被告会社の独占の利益    

ア 被告会社の超過売上高      

そこで,次に,被告会社の独占の利益を算定する前提として,本件において,本件特許権により競業他社に本件特許発明の実施を禁止していることに起因する被告会社の超過売上高を認定する。すなわち,競業他社に本件特許発明の実施を許諾していた場合に予想される売上高と比較して,被告会社がどれだけこれを上回る売上高を得ているかが問題となる。      

前記4(1)において判示したとおり,被告会社が,競業会社である豊田合成及びクリー社に対して,輝度のまさった高輝度青色LED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保っているのは,被告会社が本件特許発明を実施して半導体結晶膜を製造し,他方,本件特許権の存在により競業会社である豊田合成及びクリー社が本件特許発明を用いて半導体結晶膜を製造することができないことに起因するものと認められる。すなわち,高輝度青色LED及びLDの市場,とりわけ収益性の高い高輝度青色LEDについては,被告会社が市場において他社に対する優位を保っているものであるが,これは,被告会社が本件特許発明を独占していることが,他社の市場参入を阻む強い抑止力として働いている結果というべきである。      

青色LED及びLDの市場は,被告会社のほか豊田合成及びクリー社により占められた寡占的な市場であり,証拠上,これら3社の間に,製品自体の競争力のほかにその売上高を大きく左右する事情(例えば企業規模や販売力の顕著な差等)が存在するとは認められない。      

上記の諸事情を考慮すれば,仮に被告会社が本件特許発明の実施を競業会社である豊田合成及びクリー社に許諾していれば,上記(2)の売上高のうち少なくとも2分の1に当たる製品は,豊田合成及びクリー社により販売されていたものと認められる。すなわち,上記(2)の売上高のうち,被告会社が競業他社に本件特許発明の実施を禁止できたことに起因して得ることのできた売上の割合は,少なくとも2分の1を下回るものではないと認めるのが相当である(なお,上記(2)の売上高のうち,本件特許権が設定登録された平成9年4月18日より前のGaN系LEDの売上は,本件特許権の効力が生じる前の売上であるが,被告会社が本件特許発明を独占的に実施していたという状況は本件特許権の設定登録後と同じであるから,この売上についてもその後の売上と同様に扱う。)。    

イ 独占の利益の算定方法      

そこで,上記認定を前提として,本件特許権についての被告会社の独占の利益を算定することとなるが,その方法としては,@ 被告会社が上記超過売上高から得る利益を算定する,A 豊田合成及びクリー社に本件特許発明の実施を許諾した場合を想定して,その場合に得られる実施料収入により算定する,という2つの方法が考えられる。      

@の方法をとる場合は,被告会社が上記超過売上高(上記(2)の売上高の2分の1)から得る利益を算定することになるところ,本件においては,上記売上から得られる利益率や,LED及びLDの分野の他の特許との関係で各製品において本件特許発明の占める寄与率について,これを明らかにする証拠がない(甲13によれば,被告会社は豊田合成に対して提起した別件の特許権侵害訴訟事件において,被告会社のLED製品の限界利益率を80%と主張していたことが認められるが,これは短期間(侵害期間)に販売製品数(侵害品販売数)も限定された場面において,新たな設備投資等を伴わないものとして主張された数値であり,長期間における多数の製品の販売を想定する本件にこの数値を採用することは適切ではない。)。また,この方法では,被告会社が自ら製造販売することによりあげる収益を算定することになるが,将来の設備投資や資金調達のリスク等の諸要素をも考慮する必要が存在する。      

これに対して,Aの方法の場合は,他社から支払われる実施料収入であるから,金額としては,被告会社が自ら製造販売を行うことによりあげる利益額(上記@の方法)よりも控え目な金額となるが,他社による売上につき一定割合の収入が支払われるものであって,被告会社自らが設備投資や資金調達等を行う必要がないので,これらに伴うリスク等の諸要素を考慮する必要がない。      

本件においては,前記のとおり,@の方法をとるには証拠等が必ずしも十分とはいえないので,Aの方法により被告会社の独占の利益を算定することとする。    

ウ 本件特許発明の実施料率      

そこで,上記Aの方法により被告会社の独占の利益を算定する。      

前記のとおり,仮に被告会社が本件特許発明の実施を競業会社である豊田合成及びクリー社に許諾していれば,上記(2)の売上高のうち少なくとも2分の1に当たる製品は,豊田合成及びクリー社により販売されていたものと認められる。      

次に実施料率が問題となるが,前記のとおり,被告会社が,競業会社である豊田合成及びクリー社に対して,輝度のまさった高輝度青色LED及びLDを製造し続け,市場における優位性を保っているのは,本件特許発明を独占していることによるものであり,さらに前記2ないし4において認定した諸事情をも併せて考慮すると,仮に豊田合成及びクリー社に本件特許発明の実施を許諾する場合の実施料率は,少なく見積もっても,販売額の20%を下回るものではないと認められる。

エ 小括      

そうすると,仮に被告会社が本件特許発明の実施を競業会社である豊田合成及びクリー社に許諾していれば,上記(2)の売上高のうち少なくとも2分の1に当たる製品は,豊田合成及びクリー社により販売されていたものであるから,実施料額算定の前提となる豊田合成及びクリー社の売上高としては,上記(2)の売上高の2分の1,すなわち,平成6年度から平成22年度までの,被告会社の青色LED及びLDに関する売上高及び予想売上高につき,平成9年4月18日の時点の価値として計算した数値である1兆2086億0127万円の2分の1となる。したがって,上記の時点(平成9年4月18日)の価値として算定した実施料額は,これに本件特許発明の実施料率20%を乗じて得られた1208億6012万円となる(下記計算式参照。ただし,1万円未満切り捨て)。        

1兆2086億0127万(円)×1/2×0.2 = 1208億6012万(円)      

以上によれば,被告会社が本件特許発明を独占することにより得ている利益(独占の利益)は,1208億6012万円と認められる。   
     
(4) 被告の主張について     

ところで,被告は,相当対価の算定方法について,そもそも相当対価請求権は,特許を受ける権利の譲渡と同時に客観的に算定されるはずのものであるから,相当対価算定において算出されるべきは,あくまでも譲渡時における期待利益であり,そこで斟酌することが許されるのは,譲渡時において合理的に予想される限度における将来利益であって,口頭弁論終結時に算定される将来利益ではあり得ず,口頭弁論終結時までに被告が実際にあげた利益についても,あくまで譲渡時における期待利益を算定するに際し,一資料として斟酌することが許されるにすぎない旨を主張する(第三,二2(2)ア)。     

そして,上記主張を前提に,新日本監査法人鑑定書(乙117)を提出し,これを根拠にして,青色LEDが製品化された平成6年12月期から平成13年12月期までの間に青色LED関係の特許関連製品により被告会社にもたらされた損益を計算すると,実際にあげた税引後当期利益を累計し,研究開発費,研究資産未償却残高及び自己資本コスト累計を差し引いた結果は,むしろ14億9000万円の損失になると主張している。     

たしかに,相当対価の額は,一定の時点の価額として客観的に算定されるべきものであり,勤務規則等に職務発明の対価の支払時期が定められている場合には,特段の事情のない限り,当該支払時期を基準として,そうでない場合は譲渡時を基準として,いわば期待利益として算定されるべきものである。     

しかしながら,その算定に当たっては,事実審口頭弁論終結時までの一切の事情を斟酌することができるものである。この点は,債務不履行や不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟において,逸失利益の算定に当たり,履行期ないし不法行為時以後の事情を斟酌して逸失利益の額が算定されるのと同様である。     

本件においては,口頭弁論終結時までに明らかになった被告会社の実際の売上高や市場の成長率等の合理的数値に基づき,特許権存続期間満了時までの被告会社における本件特許発明の実施品の売上高合計額を求め,勤務規則等に当たる被告社規に定められた支払時期を基準に中間利息を控除して計算した金額を基礎として,独占の利益を算定した上で,発明者の貢献度を考慮して相当対価を算定しているものであるが,このような算定方法により相当対価を算定することは合理的なものとして当然許容されるものである。     

ちなみに,被告の提出する新日本監査法人鑑定書は,@ その計上する研究開発費及び研究資産未償却残高の範囲が不明確であって,青色LED及びLD以外の製品に関連する費用が含まれていることが疑われる,A 資本コスト率において,競業他社であるとはいえ,企業規模や資金獲得方法等の相違が明らかでなく,かつ,一般に採用されている会計原則等の異なる米国法人であるクリー社の数値を用いているが,その理由が明らかではない(青色LEDが産業界において待望されていた技術であることに照らせば,本件特許発明の事業化は,いわば成功が保証されていたものであって,事業化に特段のリスク等が存在したものでもなく,また,長期間にわたっての市場における優位性の保持が見込まれるものであった。これらの点からいえば,そもそも通常と同様の資本コストを考慮すること自体も疑問である。),B 平成14年以降の被告会社の売上高や市場規模が一切考慮されていない,などの疑問点が指摘されるものである。また,新日本監査法人鑑定書の結果に従えば,被告会社は,平成13年度末の時点において,青色LED及びLDの製造販売により,いまだ利益を出していないばかりか,逆に14億円以上 の損失を出していることになるが,これは青色LED及びLDの製造販売により被告会社が巨額の利益を得ている現在の実情とあまりにかけ離れた結論であり,同鑑定書の信憑性自体に疑問を抱かざるを得ないものである。



本件トップ <<


 注: 本内容は 東京地裁 同判決速報 の転載の一部です。







特別転載 by 株式会社 技術経営創研