藤田岳人 20100520





グリーンな科学技術とは?
〜第二回グリーンIT EXPO を視察して〜


レポート




    

グリーンIT EXPO概要

 2010年5月12日〜14日にかけて、東京ビックサイトにて「第二回グリーンIT EXPO」が開催された。
同展示会は、昨今大規模な展示会運営を展開している「リードエグジビジョンジャパン」社の主催によるもので、「ソフトウェア開発環境展」「データウェアハウス&CRM EXPO」「データストレージ EXPO」等と同時開催により、関連周辺業界の多くの集客を集めているものである。




    
「グリーンIT」とは何か?

  「グリーンIT」という言葉を聞きなれない方もいらっしゃるかもしれない。具体的には、省電力や熱対策など、環境・CO2排出に配慮したIT機器、運用、リサイクル、思想などを示す幅広い概念を表す言葉である。一言でごく簡単にいうと、「地球にやさしいIT」である。

  特に昨今のIT業界にて、IT機器資源を集中運用する「データセンター」などでは、数多くのIT機器が消費する電力や空調に要するエネルギーが問題視され、「省エネ」「熱対策」が急務となっている。データセンターの運用において、機器の集約や高性能化にともない単位面積あたりの消費電力量は年々増加しているにも関わらず、一方で施設として消費電力を抑える「グリーン化」の実現は今や社会が求めるキーワードである。この相反した問題をどのように解決していくかがグリーンITに求められており、ここにビジネスが生まれている。




出典1:グリーンIT推進協議会 グリーンITによる省エネ効果


  ちなみに、なぜ最近になってデータセンタのグリーン化が注目を集めるようになったのであろうか。
筆者は、データセンターを運用する大手企業などからの委託にて、廃熱利用や自然エネルギーを使った冷却技術の調査、また改正省エネ法がデータセンター運営に及ぼす影響などについての調査等を多く実施してきた (参考)

  これらの経緯から、上記の理由としては、地球温暖化対策に向けて各国が取り組みを見せているCO2削減の一環として業界全体が主体的に取り組みを本格化していることもあるが、東京都のCO2排出量削減義務条例が施行されたことなどを受けて、データセンタの運営主体がグリーン化に取り組み始めたことと、またITシステムを利用している各業界の企業がCO2削減にむけて自社のシステムをデータセンタに委託する流れや、「クラウドコンピューティング」の利用に拍車が掛かってきていることも背景として存在すると思われる。


グリーンIT EXPO視察の様子

  さて、これら「グリーンIT」に配慮したデータセンターは「グリーンデータセンター」或いは、「次世代データセンター」と呼ばれ、IT機器メーカを始め、空調機メーカ、電源機器メーカ、センサメーカ、ラックメーカ、設備メーカ等々、幅広い分野の企業が関連技術を利用したグリーン化の実現にむけてしのぎを削っている。今回の展示会は、このような企業からの出展が行われいると聞き、筆者は早速会場まで足をのばした。


  同展示会は、ビッグサイトの西棟にて、データストレージEXPOと場所を隣り合わせて開催されており、40社程度が20あまりの出展ブースを設けていた。中でも目を引いたのは、「NTTファシリティーズ」「日立グループ」「三菱グループ」といった大企業のブースで、規模や投入人員数などでも群を抜いていた。


各ブースの展示概要

  NTTや日立の出展内容は、主に「いかにIT機器の発熱を効率よく冷却するか」というものであり、そのために大企業を初めとして各社が知恵を絞っている現状が伺えた。一方、純粋に技術的な面から見た場合、「熱の再循環を防ぐためのアイルキャッピング?を用いて最適なIT装置の冷却を実現」といった製品とはどんなものか?とみてみると、誤解を恐れずに言えば「サーバラックを冷やすための冷気を漏れないように閉じ込める、ビニールハウスのような仕組み」であったりする。案外、古典的な仕掛けが効率的な空調にも有効であることが再認識された。



出典2:(株)NTTファシリティーズ 空調総合ソリューション「ACORDIS」


  また、「河村電器産業」という、データセンターのラック設備など扱うメーカが、「外気活用と効率的な熱回収を組み合わせた次世代データセンター向け空調システム」の展示を行っていた。IT機器の冷却に、空調機のみではなく、外気を取り入れてミックスし、温度・湿度をコントロールした上で空調に用いるという仕組みを実現したものであった。 外気を取り入れて冷却に用いることは以前よりアイデアはあり、欧米では寒冷地のデータセンターで外気導入が実際に行われている事例もあった。また、GoogleやMicrosoftも取り組んでいる「コンテナ型データセンター」でも、外気導入は積極的に行われているとの報告があった。しかし、河村電器産業へのインタビューによれば、実際に米国に視察に行ってみると、「単に外気を導引して利用しているだけ」という形態のものも多く、湿度や温度の調整もされていないので「空調」とはいえないとのことであった。同社では、日本で始めて外気導入型の空調設備を開発し、2年以上の実証実験を経て最近商品販売を開始したとのことである。




出典3:河村電器産業(株) 次世代データセンター向け空調システム「AIR NEXT」


  一方、大手の日立によるもう一つの冷却ソリューションは、「サーバ背面に後付できる、独自の自然冷媒循環システム」であった。これまで、水冷式のサーバ設備等の冷却効果は実証されてきたものの、漏電をもたらす可能性のある水をマシンルームに持込むことには抵抗が多かった。同社のシステムでは、冷媒に「HFC-134a」という代替フロンガスを用いており、万が一液体配管に異常が発生してもすぐに気化して漏電リスクを避けることができるという。更に、この冷媒の冷却に外気を利用するオプションもあり、より省エネ効率を高めることができると説明していた。




出典4:(株)日立プラントテクノロジー データセンタ向け省エネ空調システム 「Ref Assist」



グリーンな科学技術に関する考察

  今回、少々期待していた「これは!」と目を見張る新技術の展示サプライズは望めなかったものの、業界の動向やトレンドなど、展示会ならではの情報を得ることはできた。 また、暖気と寒気を物理的に分離する、外気で冷やす、ラジエターに冷媒として代替フロンを用いて冷却するなど、いわゆる既存の「ローテク」の応用でも、データセンターの運用に対して最適化することで、省エネに繋がる余地、ビジネス的な余地があることが確認された。次世代データセンターも、ハイテクとローテクの合わせ技で実現されていると思われる。

  今回の視察を通じ、社会が求める「省エネ」「環境負荷低減」を実現する「グリーンIT」への期待あ或いは社会的義務からも、この技術分野に対してビジネスチャンスが廻ってきているように思われた。更に、IT技術・インフラの整備に基づくクラウドコンピューティングやSaaSビジネスの成長は、データセンターの更なる整備を必要としている。処理性能・処理密度の高度化に伴い、空調も含む消費電力が増大している一方で、次世代データセンターとしての省エネルギー性も望まれている。 これら相反する問題を解決する「グリーンな科学技術」については、社会的・技術的見地からも、今後目が離せないであろう。

  ちなみに、前出の企業に、外気導入冷却システムを、既存のデータセンターに導入可能か?と聞いたところ、「物理的に頑丈にできているデータセンターの壁に外気導入用の穴を開ける必要があり、なかなか難しい点も多い」とのことであった。  グリーンIT実現のために、まさに既存ローテクも用いた「ブレイクスルー」が必要である、ともいえる。


参考

参考 第三回 グリーンIT & 省エネソリューション EXPO(来年開催予定)
http://www.grix-expo.jp/

出典1 グリーンIT推進協議会 平成21年2月10日 グリーンITによる省エネ効果(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai04tyuuki/sankou3/5.pdf

出典2 (株)NTTファシリティーズ 空調総合ソリューション「ACORDIS」
http://www.ntt-f.co.jp/service/aco_sol/

出典3 河村電器産業(株) 次世代データセンター向け空調システム「AIR NEXT」
http://www.kawamura.co.jp/electric/air-next.htm
      
出典4 (株)日立プラントテクノロジー データセンタ向け省エネ空調システム 「Ref Assist」
http://www.hitachi-pt.co.jp/products/ac/building_system/datacenter/cool_circulation.html