藤田 岳人 20040910

シンポジウム
「21世紀の水循環変動研究の展望」
に参加して


第一話
シンポジウム「21世紀の水循環変動研究の展望」の概要
    
第二話
水循環問題への取り組みの重要性
    
第三話
水循環研究における科学技術の夢とロマン

詳細なPDF版は こちら

    
はじめに:研究対象から政策対象となりつつある「水循環変動」

 2004年8月17日に、主催:独立行政法人 科学技術振興機構(以後、JST)、共催:内閣府により、シンポジウム「21世紀の水循環変動研究の展望」が開催されました。その開催目的には、「水循環変動研究をめぐる国内外の動向について情報交換すると共に、パネルディスカッションにより、21世紀の水循環変動を展望する。特に、今後10年間の研究およびその応用の方向性を探る」と題されております。

 まずこの開催概要を見て、なぜ、「水循環変動研究の情報交換と展望」のシンポジウムに「内閣府」が共催として参加しているのか?と、素朴な疑問を抱える方も多いと思われます。実はこの点が今回のシンポジウムの要でもあるように思います。

 平成13年、わが国の省庁再編に伴う「内閣府」の設立と同時に、重要政策に関する会議の一つとして、「各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術政策の計画立案及び総合調整を行うことを目的」とした「総合科学技術会議」が内閣府内に設置されました。今回のシンポジウムでは、共催の内閣府総合科学技術会議より、薬師寺泰蔵議員が開会のご挨拶をされました。

 すなわち、同シンポジウムのテーマである「水循環変動」は、いわゆる研究者による「研究」対象であるのみならず、「わが国の政策」にも関わる大変重要なテーマであると捉えられている、ということが理解されるかと思います。



    
地球の水循環システムと、人間の社会生活活動との関わり

 さて、そこまで重要なテーマである「水循環」とは、いかなるものなのでしょうか。

 自然科学的な側面から見ると、水が蒸発し、雲を形成し、雨や雪となって再び地上に戻り、川となって海に流れたり地面に染み込んだり氷床となったりする間に、再び蒸発していく、といった一連の「水」の循環を示しているといえます。もちろん大気や海や川には国境が無いので、これらは地球規模で変動する循環システムです。

 一方、人間の社会生活活動においても「水」は欠かせないものです。飲料のみならず、生活利用、農業利用、工業利用等、さまざまな形で利用されており、これらは自然科学的な循環ではなく、人間社会的な水の循環であるといえます。

 世界のさまざまな場所で、「水」に関わる問題が発生しています。きれいな飲料水を確保できない地域もあれば、洪水による被害を受ける地域もあります。水をめぐる利権では、しばしばトラブルや争いが発生します。
 このように、「水循環」は自然科学的な局面と人間社会的な局面の双方を持ち、人類の将来のためにも世界規模で考える必要のある重要なテーマであることが理解されると思います。

 シンポジウムのプログラムは、JSTの戦略的創造研究推進事業(CREST)での水循環研究領域に関する研究成果の発表、総合科学技術会議における水循環変動研究の推進戦略に関する発表、国際的な研究活動及び政策の取り組みに関する発表が行われたのち、水循環変動研究に携わる幅広い研究分野の代表者からなるパネルディスカッションという流れで行われました。

 これらの流れを要約すると、

    ● 研究テーマとしての水循環の重要性と取り組みの紹介
    ● わが国の政策テーマとしての水循環の重要性と取り組みの紹介
    ● 国際的な枠組み(研究者、政策)の中での水循環の重要性と取り組みの紹介

 といったものとなるかと思います。

「世界規模水循環」というテーマに対して、研究者、研究活動がどうあるべきか、国際政策の中で掲げられた目標に対して、わが国はこれらの研究をどう推進していくべきか、といった内容が、同シンポジウムの真のテーマであったと感じられました。



    
研究テーマとしての水循環とアプローチ
 
水循環に関する研究は、「水」の量や位置を把握(現地観測、衛星観測など)すること、その変動(動き)を捉えてモデル化し、水循環のメカニズムを究明すること、長期的な統計処理や計算機によるシミュレーションの実施によりその変動を知り、予測することなどが目標として挙げられます。科学研究の目標としては、他の分野のそれとあまり違わないと感じられますが、自然科学分野では人間活動の影響が無視できないレベルにまでなっていることに注意が必要です。

 ある発表者がおっしゃるには、「気候変動による川への流入量の変化より、灌漑整備などの社会活動による変化量のほうがはるかに大きくなっている」とのことでした。水循環をテーマとする場合、従来の自然科学によるアプローチのみならず、人間の社会経済活動を加味した研究アプローチが必要であるということです。

 また、研究の目的が「自然科学の理解」に留まらず、そこに人間の社会経済活動を考慮した場合の影響度の評価や、将来予測まで言及できるレベルにまでなると、おのずから全世界的な政策問題にまで関わってくることになります。

その成果が社会経済活動にどのような利益をもたらすか、といった所まで視野に入れた研究活動というのが、今日の「研究者」にとって社会から課せられた期待であるといえます。