さて、そこまで重要なテーマである「水循環」とは、いかなるものなのでしょうか。
自然科学的な側面から見ると、水が蒸発し、雲を形成し、雨や雪となって再び地上に戻り、川となって海に流れたり地面に染み込んだり氷床となったりする間に、再び蒸発していく、といった一連の「水」の循環を示しているといえます。もちろん大気や海や川には国境が無いので、これらは地球規模で変動する循環システムです。
一方、人間の社会生活活動においても「水」は欠かせないものです。飲料のみならず、生活利用、農業利用、工業利用等、さまざまな形で利用されており、これらは自然科学的な循環ではなく、人間社会的な水の循環であるといえます。
世界のさまざまな場所で、「水」に関わる問題が発生しています。きれいな飲料水を確保できない地域もあれば、洪水による被害を受ける地域もあります。水をめぐる利権では、しばしばトラブルや争いが発生します。
このように、「水循環」は自然科学的な局面と人間社会的な局面の双方を持ち、人類の将来のためにも世界規模で考える必要のある重要なテーマであることが理解されると思います。
シンポジウムのプログラムは、JSTの戦略的創造研究推進事業(CREST)での水循環研究領域に関する研究成果の発表、総合科学技術会議における水循環変動研究の推進戦略に関する発表、国際的な研究活動及び政策の取り組みに関する発表が行われたのち、水循環変動研究に携わる幅広い研究分野の代表者からなるパネルディスカッションという流れで行われました。
これらの流れを要約すると、
● 研究テーマとしての水循環の重要性と取り組みの紹介
● わが国の政策テーマとしての水循環の重要性と取り組みの紹介
● 国際的な枠組み(研究者、政策)の中での水循環の重要性と取り組みの紹介
といったものとなるかと思います。
「世界規模水循環」というテーマに対して、研究者、研究活動がどうあるべきか、国際政策の中で掲げられた目標に対して、わが国はこれらの研究をどう推進していくべきか、といった内容が、同シンポジウムの真のテーマであったと感じられました。△ |