石毛雅美 20111221




    
日本の最先端技術博覧会

 2011年10月4〜8日、千葉の幕張メッセにおいて、日本の最先端技術が一堂に揃うイベント「CEATEC JAPAN 2011」が開催され、5日間で延べ17万2137人の来場のもと盛況のうちに閉幕した。

 展示会場は1〜8ホールと広大で、筆者は特に家電メーカーが多く集まる「ホーム&パーソナルゾーン」と、ITによる安心・安全でスマートな社会をコンセプトとする「スマートコミュニティーイノベーション」内の「デジタルヘルスケアプラザ」に特に興味を持って訪れた。年間いくつかの博覧会を訪れる筆者であるが、同博覧会では時には身動きがとれないほどの来場者数と、日本的で洗練された展示スタイルを目の当たりにし、足を踏み入れてすぐからその雰囲気に胸が躍ったことが思い出される。

 膨大な展示の中で、筆者が見ることができた技術や製品はごく限られたものであったが、今年の一大イベントである同博覧会について、今年の締めくくりとしてそのいくつかを簡単に振り返っておきたい。


    
各展示ブースを歩いて 〜その1:4Kテレビ〜

  まず目に飛び込んでくるソニーのブースでは、世界初の4Kホームシアター「VPL−VW1000ES」が展示され、シアター上映の整理券配布は120分待ちという状況であった。ソニーは業務用4Kデジタルシネマプロジェクターから上映用サーバーまでを構成した「デジタルシネマ上映システム」を開発し全世界で展開しているが、その領域で培った技術を駆使してホームシアターを展開したという。4Kとは、フルHDの4倍を超える4096画素×2160画素、約885万画素の高解像度のことで、劇場用のデジタルシネマの仕様に準拠した映像フォーマットのことである。




 待ちに待ったシアター展示では10分程度の上映が行われたが、従来のフルHDに対して4Kの鮮明さが非常に高く、洋服やアクセサリーの質感の違いや、同じ「黒色」でも色の違いがはっきり見て取れる程であり、風景では近くは精細・遠方はぼやけ感が感じられるリアリティーの高さに驚かされた。

 また、シャープのブースでは、製品ではなく技術の発表として、4KパネルにI3(アイキューブド)研究所の信号処理技術「ICC(Integrated Cognitive Creation)」を組み合わせた「ICC 4K 液晶テレビ」を見ることができたが、HDと比べた現実感の違いを改めて実感した。




 この分野(4K)ではこの他にも、東芝が展示していた、コンシューマー向けでは世界初の4K対応液晶テレビ「レグザ55X3」は特に集客力のあった展示の一つであり、会場の中で革新的商品に与えられる「CEATEC AWARD 2011 メディア投票部門」でグランプリを受賞したとのこと。興味は引かれていたものの、時間の都合で実際に見ることができなかったのは少し心残りであった。

 このように、民生用の4K製品がいくつかリリースされ、いずれも自分の目で一目確認しようという人が長蛇の列をなしており、その人気は特に際立っていた。4K製品は今後コンテンツの配給手段をどのように行うかという問題を抱えているという面もあるが、国内でもいよいよ「4Kの時代」が到来していることを強く感じさせた。

    
各展示ブースを歩いて 〜その2:ワイヤレス充電〜

  次に、シャープのブースで人を集めていたのが「EV スマートハウスパワーコンディショナ」の技術紹介である(a)。電気自動車用充電システムと、電気自動車から家庭に電力を供給する電力制御装置、太陽光発電システムのパワーコンディショナを1台にしたものである。商品化には至っていないものの、1つのネットワークとなったスマートな電力システムには注目が集まっていた。

 電気自動車を活用する興味深い例のもう一つとして三菱自動車の「i-MiEV」があり、電気自動車から取り出した電力で業務用ゲーム機を動かすという内容の展示(b)が行われていた。電気自動車を「移動する電力源」と見なすそのコンセプトは、震災を経た今の日本で改めて現実味や存在感を増しているといえる。

(a)    (b)


 今回、会場を見て回りながら、最も「今すぐ使いたいな」と感じたのはWireless Power Consortium(ワイヤレス充電世界標準規格)によるワイヤレス充電機器ブースであった。企業や機種に依存しない相互互換性を実現する標準規格(Qi規格)を採用した最終製品レベルの展示品には、例えば太陽電池とワイヤレス給電台を組み込んだテーブル(a)、2台のモバイルを同時に充電できるテーブル(b)、そして自動車のコンソールにワイヤレス給電機能を組み込んだ試作品などがあり、他の作業と平行しながら、あるいは移動しながら充電が可能な点に利用価値の広がりと将来性を感じた。



    
各展示ブースを歩いて 〜その3:デジタルヘルスケア〜

  最後に紹介するのは、比較的小規模のブースが集まりながらも人が途絶えることのなかったエリアの一つの「デジタルヘルスケアプラザ」である。ここでは、標準通信規格を用いた健康管理機器の相互運用を目指すNPO法人コンティニュア・ヘルス・アライアンスが、同規格に対応するヘルスケア関連製品を多数展示していた。

 例えば、初めての一般消費者向けコンティニュア対応血圧計となるエー・アンド・デイ社の「UA−851PBT−C」は、測定した血圧データを短距離無線通信Bluetoothを利用して、ネット上の健康管理サービス(gooからだログ/NTTレゾナント)に転送させるもので、脈拍データ等と合わせて一元管理することで、専門家からのアドバイスも得られるサービスを開始するという(c)。

 その他にもビオスピクシス社は、運送業社等に向けた、アルコール検知器数値・血圧・体温・服薬状況等、運行上重要となる健康情報を無線でサーバー上にアップして記録・管理できるシステムを展示しており、タクシーやバスなどの旅客運送事業にもサービスを拡大する予定であるという。また、東京エレクトロンデバイス社は、通信機器を備えるヘルスケア機器から無線でデータ転送・管理でき、搭載したカメラなども用いて遠隔サービスを受けることも可能なタブレット端末を展示していた(d)。

(c)    (d)


 このように、電子血圧計などのデジタル健康機器とITを活用して健康促進を目指すデジタルヘルスは近年身近なものとなりつつあることがうかがえ、国際規格の浸透につれて今後も市場の拡大が見込まれよう。

    
博覧会から感じるトレンド

  時間の制限もあり、筆者が見ることができたのは限られた展示ではあったが、その中で特に興味を引かれたトレンドを今年のトレンドの一部としてまとめれば、以下のキーワードが考えられるかもしれない。

      @ 4K
      A 新エネルギー
      B ワイヤレス充電
      C デジタルヘルスケア

 特に4Kについては、博覧会内でとりわけ目立つブース展開が多く見られたこともあり、メディアなどでも数多く取り上げられていた。一方、特に今回の博覧会では、3月の東日本大震災の影響を受けて、省エネルギーや新エネルギー、健康などに関する出展がこれまで以上に目に付く形になったことにも特徴があったようである。

 また、既に備えている機能の延長――例えば「画像が美しくなった」「消費電力が少なくてよい」というような機能・技術にとどまらず、個人のライフスタイルのありようを大きく変えうる、影響度の高い内容の展示物も多かったようにも感じられた。今回取り上げた例だけをとってみても、身近な生活に必要な電源確保や車(EV)の価値に関する考え方、こまめに充電が必要となる電子機器の充電場所や方法、健康への取り組み手段も変わるということは、想像以上に大きなインパクトを感じた。身近な機器の「高質化・バージョンアップ」というより、それ以上に「生活の変革」という印象が強く、技術をベースとした明るい未来への夢も感じられた博覧会であったといえる。

 筆者個人としてはCのデジタルヘルスケアには特に関心が高い。効率がよく作動しやすく、そしてより正確な管理が可能となるこのようなサービスは、個人の健康管理のみならず介護・医療現場などでの展開にも大きく期待されている。国際規格への対応機種を増やすなど課題を解消し環境が整えられていくことで、更にバラエティーに富んだ「生活産業」の可能性が垣間見えてくるように思える。





    
参考URL

参考1 CEATEC JAPAN 2011 公式サイト
http://www.ceatec.com/2011/ja/index.html

参考2 ソニー 映画館の臨場感をご家庭で楽しめる 世界初14K(4096×2160画素)
           ホームシアタープロジェクター 発売
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/201110/11-1003/

参考3 4K映像を“創造”──シャープ、大型液晶パネル新技術を披露
http://eetimes.jp/ee/articles/1110/04/news077.html

参考4 4Kパネルと超解像で2Dも美しく、東芝が“グラスレス3D”対応のREGZA”「55X3」
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1110/04/news028.html

参考5 「スマートハウスとEVの電力連携はこれ1台でOK」
           シャープが「EVスマートパワーコンディショナ」を披露
http://eetimes.jp/ee/articles/1110/07/news019.html

参考6 iMiEVに繋がってあのゲームが遊べるドン!
http://www.gizmodo.jp/2011/10/_ceatec_imiev.html

参考7 ワイヤレス充電「Qi」、120ワットハイパワー規格化でPC充電も可能に
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1110/05/news089.html

参考8 エー・アンド・デイ 「CEATEC JAPAN 2011」 A&D 出展情報
http://www.aandd.co.jp/adhome/event/2011/ceatec2011.html


筆者は技術経営創研 マッチング部 国際産官学連携支援チーム