渡辺義光 20100621





GIS情報の利用促進に関して

〜 第6回GISコミュニティーフォーラム及び
 テクニカルワークショップに参加して 〜


レポート




    

第6回GISコミュニティーフォーラム概要

 2010年6月3日から4日にかけて、東京ミッドタウンにて「第6回GISコミュニティフォーラム」が開催されました。同フォーラムはESRIジャパンユーザ会が主催しており、基調講演、事例発表、テクニカルワークショップ、ソリューションワークショップ、スポンサー展示、ソリューション展示、ESRIジャパン製品展示、体験コーナー、懇親会などが行われ、多くのユーザが訪れる活気あふれるものでした(ESRIジャパンユーザ会の報告では、期間中2000名を超える方が参加)。

 本フォーラムの主催でもあるESRIジャパンは、米国ESRI製品(ArcGISファミリーなど)の総販売代理店です。米国ESRIはGIS(地理情報システム)関連製品では業界トップ企業であり、特にArcGISファミリーは、個人から大規模組織、さらにはインターネットを介した地球規模のネットワークに至るまで幅広いGIS利用形態に柔軟に対応でき、業界1位のシェアを持つデファクトスタンダードに近い製品です。



図1 第6回GISコミュニティフォーラム

    
GISとは何か

  GIS:Geographic Information System(地理情報システム)は、これまで紙面上に様々な分野別に作成されていた地図情報をコンピュータ内に情報として保持する事で、文字や数字、画像などを地図と結びつけて、位置や場所からさまざまな情報を統合、分析することで、コンピュータ内で分かりやすく地図表現することができる仕組を持つものです。

 近年では、地球観測衛星が撮影したデータなども利用される様になってきており、航空機から撮影した航空写真、現地踏査などから得られた情報(学術的調査、土地、施設や道路などの地理情報等)を付加し、空間、時間の面から多角的に分析・編集することで、環境、防災、都市計画等様々な分野で利用される様になってきています。更に、コンピュータの進歩により膨大なデータを扱うことが可能となり、リアルタイム情報の提供や、地球規模の情報解析、シュミレーションも可能となっています。

 この様な急激な進歩を続けているGISですが、日本政府ではどのような動きを行っているか目を向けて見ると、地理空間情報が活用される社会(行政の効率化・高度化、国民生活の利便性の向上、産業・サービスの発展・創出、国土の利用・整備及び保全)の実現を図る為に「GISアクションプログラム2010」を決定し、国民の豊かな生活と安心・安全な生活を実現するためにGISを活用するという21世紀の国家の社会基盤整備の基本を示すものとして、「地理空間情報活用推進基本法」が施行されています。

 現在、我々の日常生活では、GIS技術がどの様に利用されているかを考えてみると、以下の様な事例に利用されていることに気づきます。

・GPSナビゲーション:
 カーナビ、携帯ナビ等で利用(現位置情報と地図、ルート検索、渋滞情報、地図情報地域情報(観光地、店舗等)等との融合)

・オンラインデジタル地図:
 GoogleMap、PetaMap等(場所情報、地図、衛星、航空画像の融合及び地理・地域情報等検索機能)  


第6回GISコミュニティーフォーラムの様子

  今回、GISソフトウェアの新機能、現状、将来の動向等の情報収集を目的にGISコミュニティーフォーラムを視察に行きました。会場に入ると大型スクリーン前のデモエリアには多くの来場者が最新版であるArcGIS10のデモを見に集まり、各ブースでも多くの方々が展示品の説明を聞いている様子が見うけられました。展示会場にはスポンサーのブースが30社以上、大学・自治体・研究機関等10機関以上が参加していました。ブースを訪れてみると、スポンサーブースでは、ArcGISの機能を使った製品(ソフトウェア及びハードウェア)のデモや機能紹介が行われており、自治体、大学、研究機関等のブースでは、環境、防災、地域固有の調査等に関する研究報告が紹介されていました。また、ブース及びブースの周辺では、出展関係者や来場者が情報交換を盛んに行う様子が窺われました。

 展示内容としては、"GIS情報の利用促進"をテーマに紹介しているブースが目に付きました。GIS情報を誰でも容易に認識できる手法として、操作性、グラフィック機能、アニメーション機能の強化、そして情報の共有化をテーマにしている製品の紹介が多く見られました。その中で情報の共有化機能に注目すると、GISソフトウェアにて解析したデータ、解析結果及びその関連情報を関係者のみではなく、広く情報を公開する試みが紹介されていました。その一例として、現在では誰もが容易に入手・利用することができるGIS系コンテンツとしてGoogle Earthの利用が挙げられます。GISソフトウェアにGoogle Earthで利用できるファイル形式でGIS情報を出力する機能を持たせ、その出力結果をインターネットを介して広く公開することで、これまでGIS情報に接点のない方にも利用していただき、新たな市場の発掘・拡大を目指そうとしている試みが注目されました。  




写真1:スポンサーブースの風景


  スポンサーブースの中で印象に残った展示は、扇精光株式会社による三次元GIS情報を使ったデモでした。これは観測時期に沿って普賢岳が噴火により膨らみ、噴火後しぼんで行く様を、3Dアニメーションで表示するデモです。GIS知識の有無に係わらず、噴火による地形変化の複雑な情報を誰もが容易に認識することが可能であると感じました。

 3Dアニメーションでの状態変化は他ソフトウェアでも同様な機能を有していますが、扇精光株式会社のデモ及びソフトウェアが優れていると感じたところは、3Dで表現するグラフィックの構図、配色、表現、操作の利便性です。これからは、同分野ではユーザが必要とする情報をどれだけ理解しやすい形で提供できるかが問われてくると実感しました。




写真2:扇精光株式会社ブースの風景


ワークショップに参加しての感想

  数あるワークショップの中で『テクニカルワークショップ』で公開されていたセミナーのうち、ArcGISの新機能に関する説明、ArchGISを使った実践セミナー、GISの将来技術に関するセミナーに参加しました。

 その中で『これでわかった!座標系と地図投影法(概要偏と実践編)』では、単にArcGISの機能の説明ではなく、実際にユーザがArcGISを使って座標系と地図投影を利用する場合に必要なArcGISで使われている特有の名称・機能、実務時に陥る問題点などの代表的な問題事例を挙げ、その注意点、対策を解説していました。普段からArcGISを使って多くの種類の座標系や地図投影法を利用する場合でも、気づかされえる点、注意すべき点を再認識できる内容でした。解説者によると例年人気のセミナーであるとの事で、セミナー終了後に立ち上がると広い会場(100人以上)に立ち見の方も多く、その人気の様子が窺えました。

 将来のGIS技術の動向を探るべく、『ESRIのクラウドコンピューティング戦略』にも参加しました。近年新たなITインフラとして話題に上るクラウドですが、GIS業界でも将来の戦略として、クラウド化への動きが活発化してきているようです。今回セミナーではクラウド化への試みとして、ArcGIS Online,ArcGIS Exploreを使ったオンラインサービスの紹介がありました。特に"ArcGIS Explor"は、Web回線を使った無償のオンラインGISソフトウェアですので、興味のある方はダウンロードして、試してみてはいかがでしょうか。


GIS技術への期待

  今回GISコミュニティーフォーラムに参加することで、GISは社会のインフラとして地位を確立しつつあり、今後も情報化社会の中で、政府、自治体、研究機関、民間企業、大学等が業種を超えて連携することで、これまで以上に市場を拡大し更なる発展を続けていく業界であることが改めて確認できました。

 GIS市場の拡大の中で、GIS技術の利用分野は大きく二極化してくるものと考えられます。地球全体、国、国民の生活基盤をささえる公共のGIS、もう1つは、個人の生活をサポートする生活のGISです。そのどちらも、我々には生活に欠かせない支援ツールとなり、将来の生活基盤になることを期待しています。

 新しいGIS技術の中では、クラウドコンピューティングを使ったオンラインGISの未来にも大きな期待を持っております。これは、GIS専門知識、専門ソフトもない状況であっても、様々な情報を共有化することで誰でも利用することを可能とする新しい技術です。 公共分野での利用は勿論のこととして、特に期待している分野は災害分野での利用です。オンラインの特徴である情報伝達能力を活かし、災害地域の情報を身近な端末(携帯電話)等を利用することにより、災害地域のリアルタイムな情報を入手することが可能となります。このことより、状況把握・分析・問題解決・対応策が迅速に行われ、その情報を即座に被害地域の方々が利用することで、被害の拡大を未然に防ぐことに役立つ為です。是非実現化し、いざという時に役立つよう、運用していただきたい技術です。

 GISは、今後様々な分野で、我々の日常生活には切り離すことが出来ない重要なツールとなり、安全で豊かな生活をもたらしてくれるであろうと期待しています。


参考

参考1 第六回GISコミュニティーフォーラム
http://www.esrij.com/community/gcf/2010/

出典1 地理情報システム(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/地理情報システム

参考2 地理空間情報活用推進基本法
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/sokuitiri/tirikuukan.html
      
参考3 GISアクションプログラム2010
http://www.gsi.go.jp/GIS/icma-ap2010.html
      
参考4 Google Map
http://maps.google.co.jp/
      
参考5 扇精光株式会社
http://www.ougis.co.jp/

参考6 ArcGIS Explorer (無償GISブラウザ)
http://www.esrij.com/products/arcgisexplorer/


筆者は技術経営創研 技術統括部 情報利用開発室 主任