| はじめに |
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近年、世界各国で甚大な被害をもたらす大規模な自然災害が多発してきている。今年に入ってからは、2月にニュージランド・クライストチャーチ大地震、3月に日本で東日本大地震が起きている。内閣府防災情報のページに掲載されている世界の自然災害の状況によると、1995年以降の10年間の発生件数、被災者は、1970年代に比べると約3倍に増加しているとの報告がある(注1)。
このように増加してきている大規模な自然災害が発生した場合、我々が迅速に情報を入手できる手段の1つとして、地球観測衛星から得られる情報が挙げられる。拙稿では、東日本大震災を例にとり、震災発生後、地球観測衛星が果たした役割を紹介する。
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| 1.地球観測衛星とは |
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地球観測衛星とは、地球を観測するための各種センサーを搭載し、大気や海洋、地表面などの詳細な観測を行うことを目的とした人工衛星である。本コラムで紹介する地球観測衛星は、地表面を主に観測する衛星であり、世界各国の衛星が約500〜700km上空を周回し、日々撮影を行っている。
地球観測衛星に搭載されるセンサーは、大きく光学センサーとレーダーセンサーの2種類に分類される。光学センサーは日中の地表を撮影するカメラのようなもので、レーダーセンサーは衛星から発信した電波が地表で反射したものを捉える観測機器である。ここでは、東日本大地震で活躍した最新の地球観測衛星を表1(注2)に紹介する。特にレーダーセンサーを搭載した衛星は、昼夜、天候等を問わず撮影が可能な為、災害時等には有効なセンサーである。
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表1 最新の地球観測衛星(光学センサーとレーダーセンサー)
| 光学センサー |
| 衛星名称 | 衛星機関 | 性能 | 打ち上げ日 | イメージ |
| GeoEye-1 | GeoEye (アメリカ) | パンクロ(白黒):41cm マルチ(カラー):165cm(4band) | 2008年9月 |  |
| WorldView-1 | DigitalGlobe (アメリカ) | パンクロ(白黒):50cm | 2007年9月 |  |
| WorldView-2 | DigitalGlobe (アメリカ) | パンクロ(白黒):46cm マルチ(カラー):184cm(8band) | 2009年10月 |  |
| レーダーセンサー |
| 衛星名称 | 衛星機関 | 性能 | 打ち上げ日 | イメージ |
| RADARSAT-2 | CSA (カナダ) | Ultra-Fine:3m Spotlight:1m | 2008年12月 |  |
TerraSAR-X TanDEM-X | DLR (ドイツ) | StripMap(SM):3.3-3.5m 高分解能SM:1.1-1.8m | 2007年6月 2010年6月 |  |
| COSMO-SkyMed | e-GEOS (イタリア) | HIMAGE:3m Spotlight(MODE2):1m | 1号機:2007年06月 2号機:2007年12月 3号機:2008年10月 4号機:2010年11月 |  |
出典:財団法人リモート・センシング技術センター ”総覧 世界の地球観測衛星 −web版−” 及び 最新の地球観測衛星等(参考5〜9)
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| 2.自然災害の発生状況 |
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東日本大震災(M9.0:2011年3月)は、チリ地震(M9.5:1960年5月)、スマトラ沖地震(M9.4:2004年12月) 、アラスカ湾地震(M9.2:1964年3月)についで1900年以来5番目に大きい地震であったといわれている。2010年以降発生した震度・被害の大きい地震を表2に示す。2010年以降、約1年半以内で大きな被害を与えた地震が何度も発生している事、その被害者や死亡者の膨大な人数から自然災害の脅威を感じる。
また、スマトラ沖地震や東日本大地震は、震災のみならず津波の被害も甚大であり、被害を受けた地域が広範囲に及んでいることが特徴である。このような広域の被害状況の迅速に把握に対しても、人工衛星の情報は有効である。
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表2 2010年以降の大地震
| 災害名称 | 発生国 | 発生日 | 被害状況 | マグニチュード(M) モーメントマグニチュード(Mw) |
| ハイチ大地震 | ハイチ | 2010/01/12 | 死亡者:31万6千人程 (2011/01/12時点) | M7.0 |
| 青海地震 | 中国 | 2010/04/14 | 死亡者:1944人 行方不明者:216人 負傷者:1万2315人 (2010/04/19時点) | M6.9 |
| スマトラ島沖地震 | インドネシア | 2004/12/26 2005/03/29 2010/04/06 2010/05/09 2010/10/25 | 死亡者22万人 (2004/12/26時点) 死亡者22万人超 被災者150万人 (2005/03/28時点) 死亡者370人 (2010/10/25時点) | M9.4 M8.6 M7.8 M7.2 M7.7
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| カンタベリー地震 | ニュージーランド | 2010/09/04
2011/02/22 | 死亡者:0人 負傷者:100人以上 死亡者:180人 負傷者:200人以上 | Mw7.1
Mw6.1
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| 東日本大震災 | 日本 | 2011/03/11 | 死亡者:15477人 行方不明者:7764人 (2011/06/22時点) | Mw9.0 |
出典:ウィキペディア フリー百科事典の各災害項目から(ハイチ地震、青海地震、カンタベリー地震、東日本大地震)及び 記事:青海地震、スマトラ島沖地震津波被害
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| 4.東日本大震災時の地球観測衛星の活動状況 |
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世界各国の衛星は、日本での地震・津波の発生の情報を受け、直ちに独自に観測を行い、様々な情報を提供してきた。東日本大震災後に地球観測衛星がどの様な観測を行い、どのような情報を提供し、どのような貢献をしてきたか、以下に例を数件紹介する。
光学センサーを搭載しているGeoEye-1、IKONOS(解像度1m)(日本総代理店JSI(株))は、3月12日に災害地域の観測を行い、3月13日には、宮城県石巻市周辺、仙台市周辺、相馬市周辺、青森県八戸市、田子町周辺、岩手県大船渡市周辺宮城県石巻市、東松島市、塩竃市、仙台市周辺、福島県相馬市周辺といった複数の被災地について、災害前の画像と比較した観測画像の情報を公開している。孤立した被災地も数多く存在していたであろう時期に、まずは観測した画像を速報として迅速に提供したことは評価に値する。一方で、その後、被害状況を詳細解析・分析した衛星画像も合わせて随時公開・更新を行い情報の信頼性を上げている。この点は素晴らしい対応と考えられる(注3)。また、GeoEye社のサイト(http://www.geoeye.com/CorpSite/promotions/Image_Slider.aspx )では、スライド式に災害前後の画像を比較できる様に、閲覧手法を工夫した画像を公開している(注4)。
更に、レーダーセンサーを搭載しているTerraSAR-X(日本総代理店(株)パスコ)は、3月13日に光学センサーと同様に被害地域の観測を行なっている。この観測データは、災害発生前、後の地形変化図、想定浸水範囲図、津波による湛水域の抽出図等、様々な情報に加工され、公開されている(注5)。
一方、日本の宇宙機関JAXAでは、震災直後の3月12日に陸域観測衛星ALOSを使って被災地域を観測し、政府や関係機関に情報提供を行なっていた。更に、JAXAは超高速インターネット衛星(WINDS)を通じた岩手県への衛星通信回線の提供、技術試験衛星(ETS-[)による大船渡市、大槌町への衛星通信回線の提供等、通信衛星を使った支援も併せて行い、自治体のサポートチームや住民の通信等に貢献したとの事である(注6)。
その他の各国の衛星機関、地球観測衛星も同様に震災後、被災地域を迅速に観測し、画像や解析情報を提供してくれている(宇宙機関を中心とする災害管理に係る国際協力枠組みを"国際災害チャータ(注7)"と称する。その目的は、大規模な災害発生時に、参加宇宙機関が最善の努力に基づき、地球観測衛星データの無償提供を行い、災害から生じる危機の軽減等に貢献することである)。
これは、日本がこれまで世界各地で発生した災害に、様々な形で国際貢献してきた賜物である。
地球観測衛星は、地上で発生している災害の影響を受けることなく、迅速に災害対象地域を広範囲に渡って詳細に撮影することが可能な手段である。科学技術の進歩に伴って衛星の分解能や撮影技術も向上し、航空写真かと見間違う程の情報を提供してくれる。
また、災害地域の現状を広範囲に把握することができることのみならず、各センサー特有の観測情報を解析することで、地上からは得ることが出来ない災害を受けた地域の様々な情報を提供する事もできる。このような特徴を持つ情報を、政府や関係機関、被災現地に迅速に提供することにより、災害状況の把握、救助、支援計画に役立てられている。
以下、地球観測衛星(光学センサー)による東日本大震災地域の撮影画像の例を図1、図2に示す。図1では、津波の影響により建造物が破壊され、泥流にまみれて宅地も田畑も黒ずんでいることが確認できる。また図2では、水蒸気爆発を起こした後、人間が近づくことが難しかった原発の建屋の崩壊具合が確認できる。
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| Yuriage in Natori in 2008 (c)2001 Google, DigitalGlobe | Yuriage in Natori after tsunami (c)2011 Google, GeoEye |
| 図1 宮城県名取市閖上近郊(左:震災前、右:震災後) |
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| Fukushima Daiichi power plant on March 18 2011 (c) Google, GeoEye |
| 図2 福島第一原子力発電所(震災後) |
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| まとめ |
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以上のように、技術の進歩に伴って地球観測衛星の活躍範囲が広がり、また運用や連携、情報インフラ整備による観測頻度の向上や情報の流通により、これまでなかなか把握し切れなかった情報を迅速に得ることも可能となってきた。
今後、地球の観測や災害監視等の広範囲な分野における観測データから得られる多くの情報を、他の様々な手法により取得された情報と統合的に解析する研究を進め、地球規模の環境問題や大規模な自然災害等の脅威に対して、我々や世界の人々が安全、安心に生活を維持できる情報を提供できる技術が確立され、自然災害の被害を少しでも低減することに繋がればと切に願うものである。
現在、産業技術総合研究所 情報技術研究部門の研究プロジェクトとして、GEO Grid(Global Earth Observation Grid(地球観測グリッド))(注14)グリッド技術を用いて、地球観測衛星データの大規模アーカイブの高度処理を行い、さらに各種観測データベースやGIS(Geographic Information Systems:地理情報システム)データと融合し、ユーザが手軽に扱えることを目指したシステムが研究されている。ここでは、膨大なデータ量となる衛星画像データを大量に、かつ迅速に取り扱えるよう、様々なIT技術が導入されている。この研究成果が早く技術として確立し、現実の運用システムとして稼動するようになれば、と期待している。
残念ながら、日本の地球観測衛星であるALOSは5月12日をもって運用を終了したが、国内外におけるこれまでの多数の緊急観測による災害状況把握・復興活動等への多大な貢献は、極めて高く評価されている(注15)。今後、ALOSの後継機であるALOS-2(2013年度予定)及びALOS-3(2014年予定)が早く打ち上がり、我々の安全・安心のために活躍してくれることに期待している。
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